新技術説明会 ~今年の新技術動向2015~

1.総論

(一社)日本分析機器工業会と(一社)日本科学機器協会との連携で開催するJASISは、今年も9月2日(水)から9月4日(金)の3日間、幕張メッセで開催されます。
「新技術説明会」は、出展企業が、自社の製品及び分析法などの技術動向、実際の分析にあたっての参考情報などを提供する場であり、各分野、各機器の専門家が直接説明を行うこと、各社の情報を効率よく収集できることなどから、毎年多くの方々に参加いただいている企画です。
今年の機種別及び総発表件数について、グラフ(PXX)にまとめましたので、ご参照ください。総テーマ数は、昨年の355件に対して、360件と、5件増加しています。機種別では、「その他」に分類されるものが最も多く90件25%(昨年87件25%:以下括弧内は昨年実績)、次いで「分離分析」72件20%(72件20%)、「光分析」52件14%(48件14%)、「質量分析」52件14%(42件12%)、「表面分析」32件9%(33件9%)、「X線応用分析」28件8%(36件10%)などとなっています。ほぼ昨年と同じ傾向ですが、「質量分析」の増加が目立っています。
説明がハードウエア・ソフトウエアとアプリケーション・ノウハウ等のどちらに重点を置いているか、という観点で見ると、どちらかというとアプリケーション・ノウハウ等に重点を置いている説明が41%(39%、以下括弧内は昨年実績)、半々が45%(45%)、どちらかというとハードウエア・ソフトウエアが14%(16%)と、アプリケーション・ノウハウ等に重点を置いた説明の比重が一層高くなっています。
発表の対象となる分野については、昨年、一昨年と同様、「ナノ・材料」の区分が最も多く、全体の39%(昨年36%、以下括弧内は昨年実績)を占めています。次いで「その他」29%(29%)、「バイオ」16%(16%)、「環境」14%(17%)、「IT」2%(2%)となっており、素材の解析に関する分析機器、手法が重視されている傾向がさらに増している一方で、「環境」が減少しています。
分析の対象については、「創薬・製薬」(昨年の第2位、以下括弧内は昨年順位)「食品」(1位)「石油・石油化学ゴム・プラスチック」(3位)「電子材料・半導体」(4位)「ライフサイエンス・医療」(5位)「セラミックス・誘導体・液晶」(7位)「環境(大気・水質・土壌)」(6位)「紙・パルプ・繊維・インク・染料」(8位)「鉄鋼・非鉄金属」(9位)「環境(廃棄物)」(10位)「その他」(11位)の順となっており、「創薬・製薬」がトップに返咲いたことが注目されます。また、「鉄鋼・非鉄金属」分野が102件から124件へと大きく増加しており、金属分析の分野で新たなる分析ニーズが産まれていることが示唆されます。

2.機種別動向

2.1 光分析装置

光分析の発表件数は全52件(昨年48件)で全体の14%でした。その内訳を装置分類で見るとラマン16件、赤外・近赤外9件、紫外可視5件、原子吸光4件、ICP関連4件、その他14件でした。ここ数年伸長著しいラマン分光は、FTIRと同様にイメージングを謳う演題が主でしたが、今年はラマンとFTIRの使い分けを主眼にした演題が5テーマあり注目されます。ラマン関連の演題のもう一つの特徴は、キーワードに携帯型、検査、異物、不良解析などスクリーニング用途を意図したテーマの一方、SPM/AFMなどの表面分析と組み合わせた複合システムの提案もあり、二極化の傾向が見られます。その他14件の演題の中では、テラヘルツイメージング、粘度や粒子解析といったテーマが目を惹きます。光分析の演題を分野別で見ると、ナノ・材料関連18件、環境11件、バイオ2件、その他20 件でした。光分析の応用は長く材料分野に偏重してきましたが、その様相が一変したというのが今年の光分析関連の特徴です。

2.2 X線応用装置

X線応用装置関連の発表件数は昨年まで増加傾向にありましたが、今年は28件で、過去最多であった昨年から8件減少しています。(昨年36件:以下括弧内は昨年実績)。
今年の発表件数を機種別で見ますと、蛍光X線分析装置は16件(18件)、X線回折装置は7件(13件)、その他5件(5件)となっています。X線回折装置が大幅に減少する一方、蛍光X線分析装置と両者に分類されない装置は昨年並みとなっています。減少分のほとんどがX線回折装置関連となっている中で、X線残留応力測定を全面に出した発表は2件(0件)と増加しています。その他5件の内訳は、X線CT2件、XPSおよびXPSと他手法の複合装置2件、電子プローブX線マイクロアナライザー1件です。
発表内容を機種別に見ますと、蛍光X線分析装置では、携帯・ポータブル・卓上など小型装置に関する発表が多くなっています。これまで相容れない手法であった、波長分散型蛍光X線分析とエネルギー分散型蛍光X線分析の比較や、両手法の複合装置に目新しさが感じられます。
X線回折装置では、半導体検出器を用いた装置の高感度化・高速化が多く、X線回折における検出器の主流が一次元二次元の半導体検出器へ移行していることがわかります。昨年は測定例や測定手法、ノウハウ、多様な材料を対象とした分析例を主とする発表も多くありましたが、今年は装置の高性能化や小型化に重点を置いた発表が目立ちます。

2.3 質量分析装置

質量分析装置の発表件数は52件となりました。これは新技術説明会全体の中では、「その他(90件)」と「分離分析(72件)」に次ぐ発表件数となっており、「発光分析(52)件」と同数となっています。発表件数の占有率は全体の14%を占めています。昨年は全体の12%(発表件数は42件)を占めていました。発表件数の機種別伸び率としては、質量分析装置が最も高い伸び率(124%)となりました。一方、発表件数を分野別に整理してみると、「ナノ・材料分野」が13件、「バイオ分野」が11件、「環境分野」が8件となり、「その他の分野」が20件となります。「ナノ・材料分野」ではTOF-MSやICP-MSを用いたアプリケーションの紹介や新しい解析手法の紹介、更には材料解析のマザーツールとなりつつあるTOF-MSの基礎の基礎まで紹介されています。「バイオ分野」ではLC/MSやMALDI-TOF-MSを用いた最新アプリケーションの紹介や質量分析イメージングの紹介が行われます。「環境分野」ではGC/MSやLC、GC/MS/MS等を用いた食品、環境中の農薬分析例や異臭分析のノウハウ等が紹介されます。質量分析装置は多種多様な応用分野への広がりを見せており、ユーザーが悩んでいる問題を解決できるノウハウ紹介も多数用意されています。今年度も質量分析装置ユーザーにとっては魅力的な説明会となっています。

2.4 表面分析装置

今年は32件(昨年32件)と昨年と同件数になっております。最も多いのがSEM(走査型電子顕微鏡)の発表ですが、昨年よりも6件減少して、10件となりました。次にSPM(走査プローブ顕微鏡)の発表が多く、昨年よりも3件増加して7件となっております。その他、EDS (エネルギー分散型X線分析装置)4件、XPS(X線光電子分光装置)3件、TEM(透過型電子顕微鏡)2件、FIB(集束イオンビーム加工装置)1件、SIMS(二次イオン質量分析計)1件などとなっております。
これらの中で、今年も昨年に引き続き話題となっているのが3Dイメージングです。従来広く使用されてきたFIB, SIMSの改良、及び新しい応用例に加え、非破壊分析手法である顕微鏡と分光装置を組み合わせた複合機による応用例や、硬X線を用いたHAXPES(硬X線光電子分光装置)が紹介されています。HAXPESでは従来型XPSより更に深い情報を得ることができます。

2.5 分離分析装置

分離分析に関する発表件数は昨年と同数の72件で全体の20%でした。その内訳を装置分類で見ると、LC関連43件、GC関連14件、イオンクロマト6件、その他9件でした。LC関連が分離分析の約60%を占め、分離分析のなかでは、これまでと同様、LCの比率が高くなっています。LC関連では、高性能化への試みとしてのUHPLCやコアシェル充填剤などは9件と定着してきました。
分離分析の演題を分野別で見ると、ナノ・材料関連8件、環境12件、バイオ20件、その他32件でした。アプリケーション・ノウハウを含む発表の比率は、昨年から9割を超えています。用途開発やノウハウの獲得に、大きな関心を持っていることが示されています。前処理技術(ダイナミックヘッドスペースや燃焼前処理など)と組み合わせた分離分析装置に関する発表が14件となっており、分離分析装置の用途を拡大する動きが目立ちます。

2.6 前処理関連

前処理関係の発表件数は、昨年度2件増の14件となります。分野としては、食品関係が3件、医薬関係が1件、環境関係が5件,ナノ・材料関係が1件、バイオ関係が3件、その他が1件となっております。装置に関する発表はマイクロ波分解装置が5件、ロボットが2件となっています。その他、固相抽出関係が5件となります。金属分析を目的とした無機関係の発表は半数の7件で環境、ナノ・材料、医薬品などの分野を対象としております。固相抽出関係では、従来からのノウハウ紹介1件に加え、従来の固相とは形状、官能基の異なる製品が紹介されています。今年の前処理関係の発表は食品からバイオまで幅広い分野での発表内容となっています。

2.7 システム関連

システム関連では6件の発表があります。昨今は論文不正問題等が一般報道でも話題になりましたが、安定性試験などの指図発行から記録書作成、生データも管理するようなシステムや、分析業務の実態に合わせて業務進捗、承認、基準値、結果等の管理機能をもったシステムなど、ITを用いた分析管理に関するシステムの講演が2件予定されています。
またデータ解析、とりわけ拡張的なレポート機能を有するデータシステムによる分析業務の効率化を目指す発表も2件あります。仕事のワークフローに沿ったシステムを構築して自動化、省力化、高機能化を目指した動きは以前からありますが、データ解析の分野では引き続きニーズが高いようです。
一方で、メーカーや機種の枠を超えたメンテナンスサービスおよび機器データの可視化に関する発表もあり、今後のラボの新しい運営方法を示唆するものと言えましょう。
自動化、とりわけ最も時間と手間のかかる前処理についてラボの省力化ニーズは依然として高いようです。今年はバイオ分野における高度な細胞調整を、新しい発想で自動化するシステムの発表があり、今後の動向が注目されます。

2.8 その他の動向(熱分析含む)

その他(熱分析を含む)の発表総数は104件(昨年99件:以下括弧内は昨年実績)と微増しました。分野別内訳では、「ナノ・材料」が51件(43件)、その他26件(26件)、「バイオ」は18件(4件)、「環境」は5件(9件)、「IT」は3件(1件)という順でした。昨年、一昨年に続き「ナノ・材料」が上位を占めております。また、「バイオ」は昨年に比べると大幅に増加しましたが、一昨年と同等数に回復したとも言えます。熱分析は2件と昨年(14件)より大幅に減少しています。

3.分野別動向

3.1 バイオ関連

バイオ関連の発表件数は昨年とほぼ同数の57件です。発表内容は、カラムテクノロジーにかかわる生体成分の分離ノウハウの発表が23件、質量分析計を用いた発表が11件とクロマトグラフィーに関連する発表が全体の約60%を占めています。この傾向は昨年と変わらず、比率はやや高くなっています。
発表テーマは全体的にアプリケーションの比重が高いものが多く、ノウハウを掲げたものが多く挙げられています。

3.2 環境関連

環境関連の発表は51件(昨年58件、以下の括弧内は昨年実績)であり、昨年より7件の減少(9%減)となっています。
発表者からの申告に基づく分類としては、今年は分離分析の12件で最多であり、昨年トップの質量分析は4番目の8件に減少しています。光分析が11件で2番目に多く、その他が9件で3番目、前処理とX線応用分析がそれぞれ5件、表面分析が1件という内訳でした。全体的に微減傾向にあり、昨今のニーズを反映した水銀分析に関する発表も3件含まれています。

3.3 ナノ・材料

今年のナノ・材料関係の発表件数は140件(昨年130件)と増加しています。装置別でみると、表面分析装置27件(28件)、X線応用装置20件(17件)、光分析装置の19件(17件)の順でした。続いて、質量分析装置13件(11件)、熱分析11件(12件)、分離分析装置8件(6件)の順で、昨年とほぼ同様の順位です。その他の発表が40 件(昨年31件)あり、粒径・粒度分布測定装置などをナノ粒子測定に用いた演題10件(10件)、粘度・粘弾性測定装置の応用事例が6件(4件)あります。この分野では物性評価装置が多く含まれますが、今年もNMRの応用事例が6件(5件)あります。ここでは、試料の分野を限定せずにナノ材料一般論として、微量元素分析も含めた応用事例を紹介しています。

3.4 その他(IT含む)

IT関連を含む「その他」の分野に関する昨年の発表総数は108件であったのに対し、今回は113件となり,昨年より増加しました。装置別では分離分析装置が32件(昨年36件:以下括弧内は昨年実績),X線応用分析3件(10件),質量分析装置20件(9件)、光分析装置20件(14件)、前処理関連5件(5件)でした。質量分析が突出して増加している他、例年通り、分離分析の半数以上を高速液体クロマトグラフ(HPLC)及びその付属装置が占めています。

「2015年度新技術説明会」発表件数推移

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