1.総論

(一社)日本分析機器工業会と(一社)日本科学機器協会との連携で開催するJASISは、今年も9月6日(水)から9月8日(金)の3日間、幕張メッセで開催されます。
「新技術説明会」は、出展企業が、自社の製品及び分析法などの技術動向、実際の分析にあたっての参考情報などを提供する場であり、各分野、各機器の専門家が直接説明を行うこと、各社の情報を効率よく収集できることなどから、毎年多くの方々に参加いただいている企画です。
今年の機種別及び総発表件数について、グラフにまとめましたので、ご参照ください。総テーマ数は、昨年の352件に対して、347件と、5件減少しています。機種別では、「その他」に分類されるものが最も多く118件34%(昨年96件27%:以下括弧内は昨年実績)、次いで「分離分析」54件16%(73件21%)、「質量分析」48件14%(49件14%)、「光分析」35件10%(46件13%)、「表面分析」28件8%(32件9%)、「X線応用分析」28件8%(29件8%)などとなっています。ほぼ昨年と同じ傾向ですが、「その他」の増加がより目立っています。
説明がハードウエア・ソフトウエアとアプリケーション・ノウハウ等のどちらに重点を置いているか、という観点で見ると、どちらかというとアプリケーション・ノウハウ等に重点を置いている説明が41%(41%、以下括弧内は昨年実績)、半々が43%(42%)、どちらかというとハードウエア・ソフトウエアが16%(17%)と、アプリケーション・ノウハウ等に重点を置いた説明の比重が高くなっています。
発表の対象となる分野については、昨年、一昨年と同様、「ナノ・材料」の区分が最も多く、全体の40%(昨年44%、以下括弧内は昨年実績)を占めています。次いで「その他」31%(28%)、「環境」14%(11%)、「バイオ」13%(15%)、「IT」2%(2%)となっており、素材の解析に関する分析機器、手法が重視されている傾向が続いています。
分析の対象については、「創薬・製薬」(昨年の第1位、以下括弧内は昨年順位)、「食品」(2位)、「石油・石油化学ゴム・プラスチック」(3位)、「紙・パルプ・繊維・インク・染料」(5位)、「環境(大気・水質・土壌)」(7位)、「セラミックス・誘導体・液晶」(6位)、「電子材料・半導体」(4位)、「ライフサイエンス・医療」(8位)、「鉄鋼・非鉄金属」(9位)、「環境(廃棄物)」(10位)、「その他」(11位)の順となっており、「創薬・製薬」が昨年に続きトップとなっていることが注目されます。また、「紙・パルプ・繊維・インク・染料」分野も昨年の148件から164件へと大きく増加しており、この分野の成長が伺えます。

2.機種別動向

2.1 光分析装置

光分析の発表件数は全35件(昨年46件)で、演題全体の10%です。装置分類での内訳は、ラマン13件(昨年14件)、赤外・近赤外8件(同8)、紫外可視5件(4)、原子吸光1件(2)、ICP関連1件(2)、その他7件(17)でした。ここ数年首位となって以来ラマン分光は、FTIRと同様顕微システムによるイメージングを謳う演題を基本に、ラマンとFTIRの使い分けに関する演題、X線関連機器や粘度計などと組み合わせた複合システムの提案があります。これに加え今年の傾向として、異物・不良解析、不審物の発見、高分解・超解像、食品、多変量解析、携帯型など用途の多様化を見せています。従来、光分析の演題は分野別で言う「材料分野」で重用される傾向が顕著でしたが、特にラマンの応用分野の広がりは、この分光法が普及期に入りつつあることを示しています。

2.2 X線応用装置

X線応用装置関連の発表件数は28件(昨年29件)で、昨年とほぼ同件数となりました。今年の発表件数を機種別で見ますと、「蛍光X線分析装置」は11件(15件)、「X線回折装置」は6件(6件)、「その他」は11件(8件)となっています。ここ数年「X線回折装置」が減少傾向にありましたが今年は微増となった一方、「蛍光X線分析装置」が4件減となっています。「その他」は3件の増加となっており、「蛍光X線分析装置」の減少分を「その他」が補う形となっています。「その他」11件の内訳は、X線CTが昨年同様4件、XPSが1件、EDS/EBSD1件、異物分析2件、複合分析3件です。X線CTは装置分野として定着した感があり、また異物/複合分析では「蛍光X線分析装置」を利用している事から、「蛍光X線分析装置」16件、「X線回折装置」6件、「X線CT装置」4件、「その他」2件と読みかえることもできます。
発表内容を機種別に見ますと、「蛍光X線分析装置」では測定ノウハウや測定例に関する発表が目立ち、現場に即したソリューションの提供という方向付けが読み取れます。同様な傾向は「X線回折装置」でもみられ、高性能化した装置の紹介に関する発表と測定例や測定手法、ノウハウに重きを置いた演題が拮抗しています。「X線CT装置」では、装置性能の紹介と測定例の紹介がそれぞれ2件、「その他」ではEDS/EBSDとXPSの最新状況の紹介となっています。

2.3 質量分析装置

質量分析装置の発表件数は48件となりました。新技術説明会全体の中では、「その他(118件)」と「分離分析(54件)」に次ぐ発表件数となっています。発表件数の占有率は全体の14%を占めています。昨年も全体の14%(発表件数は49件)を占めており、発表件数並びに占有率ともに従来と同様の傾向で、依然として関心の高い分野であることがわかります。質量分析装置はさまざまな機器、イオン化手法と組み合わされ、多種多様な応用分野に広がりを見せていますが、今年度は食品分野、規制対応、材料/化成品分析をはじめとするメジャーな分野での使用例が多数紹介されます。それとともに、バイオマーカー、分子プロファイリング、ナノ粒子、E&L、ミリマス解析などの応用分野への魅力的な説明会も実施されます。一方、質量分析装置の特徴のひとつとしてライブラリー検索が多用されますが、新たな機能を導入して候補化合物を絞り込むソフトウエア技術を併用し、異臭、RoHS規制など分野別ライブラリーを用いたスクリーニング分析への応用など、ユーザーにとっては見逃せない説明会も実施されます。今年度も質量分析装置ユーザーにとっては魅力的な説明会となっています。

2.4 表面分析装置

今年は28件(昨年32件)と昨年に比べて4件減少しております。最も多いのがSEM(走査型電子顕微鏡)の発表です。昨年と同様に9件となっています。次にSPM(走査プローブ顕微鏡)の発表が多く、昨年よりも6件減少して4件になりました。その他、EDS (エネルギー分散型X線分析装置)3件、XPS(X線光電子分光装置)3件、TEM(透過型電子顕微鏡)3件などとなっております。

2.5 分離分析装置

分離分析に関する発表件数は54件で、昨年の73件からは減少しましたが、引き続き単体では最も講演数の多い分野であることに変わりありません。その内訳を装置分類で見ると、LC関連30件、GC関連13件、イオンクロマト5件、キャピラリー電気泳動や超臨界クロマトなどその他の分類が6件でした。LC関連が約55%を占め、分離分析のなかでは従来どおり最も比率が高くなっていますが、基礎ノウハウの講演が10件、カラム技術の講演が10件を占め、LC装置の新技術の講演数の割合は高くありません。高性能化への試みとしてカラム技術の進歩が定着したテーマとなってきました。
GC関連では、製薬の残留溶媒やRoHS規制など時流を反映した分野のアプリケーションが目を引きます。また、従来装置からの大きな進歩を感じさせるハードウエア新技術に関するテーマも見られ、テクノロジー的な転換期の到来を感じさます。
分離分析の演題を分野別で見ると、近年の傾向そのままに「コツ」や「ワザ」といった「ノウハウ」に関する発表が、特にLC分野で高い比率を示しています。年々ハードウエアやシステムが進化する一方で、用途開発やノウハウの獲得にユーザーが大きな関心を持っていることが背景にあるようです。また、今年はSFE、SFC関連の講演が5件あり、高圧ガス規制緩和の動きを背景にした新たな広がりにも期待が高まります。

2.6 前処理装置

前処理関係の発表件数は、18件となります。分野としては、環境6件、ナノ材料3件、バイオ1件、その他8件となり、昨年と比べて環境が4件、ナノ材料が1件、その他が4件増えています。また、装置に関する発表は、マイクロ波を用いた分解抽出装置が4件、その他の分解装置が3件、液体クロマトグラフ関連装置が2件、遠心分離装置が1件、検体前処理装置が1件、電子線応用装置が1件となります。分析目的および分析対象に応じて、種々の装置が使われています。その他、固相抽出における新規アイテム紹介や前処理メソッドを紹介するノウハウ発表も6件で、3分の1を占めています。幅広い成分を対象とするため、分析目的に応じた前処理方法や分析手法、さらにそれらの組み合わせなど、多種多様の前処理が発表されます。

2.7 システム関連

システム関連では、今年は10件の発表が予定されています。このうちデータインテグリティーに関する発表が4件予定されており、データの信頼性に関する発表が多くなっています。
試薬管理、ラボマネージメントシステムに関する発表もありますが、これらのシステムは日々の管理業務の効率化が期待でき、重要な手法となっていくでしょう。
また分析自動化やラボオートメーションシステムの講演もそれぞれ1件ずつ予定されています。分析化学の分野においても、ロボットによる自動化・省力化が、今後より進んでいくことが予想され、動向が注目されます。

2.8 その他の動向(熱分析含む)

その他(熱分析を含む)の発表総数は126件(昨年105件:以下括弧内は昨年実績)と昨年より21件の増加となりました。また、126件中8件が熱分析です。分野別内訳では、「ナノ・材料」が57件(43件)、その他39件(35件)、「バイオ」は14件(14件)、「環境」は11件(10件)、「IT」は0件(3件)という順でした。昨年、一昨年に続き「ナノ・材料」が上位を占めております。また、かつ、「バイオ」、「環境」の増減が殆どないのに比べ、「ナノ・材料」がかなり増加しています。なお、熱分析は8件と昨年(9件)とほぼ同等でした。

3.分野別動向

3.1 バイオ関連

バイオ関連の発表件数は46件、発表内容は分離分析にかかわる発表が15件、質量分析計を用いた発表が8件とクロマトグラフィーに関連する発表が全体の約半数を占めおり、この傾向は昨年とほぼ同じ傾向です。
センサーなど測定や観察に関するものが5件、サンプルハンドリングやラボで用いる水製造装置等に関する講演も12件あります。発表テーマは全体的にアプリケーションの比重が高い内容で、創薬・製薬、食品またライフサイエンス・医療を対象とした発表が多く挙げられています。

3.2 環境関連

環境と登録された発表は47件(昨年39件、以下の括弧内は昨年実績)であり、昨年より8件の増加(12%増)となっています。内訳は、分離分析:9件、質量分析:9件、光分析:6件、X線応用分析:6件、前処理:6件、その他:11件となっています。
分析対象物質に環境物質を含めている発表は、大気・水質・土壌関連で164件(129件)、廃棄物関連で101件(79件)であり、昨年に比べて27%増および28%増であり、大幅に増加しています。環境物質測定に対する関心度の高まりがうかがえます。

3.3 ナノ・材料

今年のナノ・材料関係の発表件数は137件(昨年155件、1昨年140件)と1昨年並みとなります。装置別でみると、表面分析装置26件(31件)、光分析装置17件(26件)、X線応用装置16件(17件)、質量分析装置12件(19件)の順でした。続いて、分離分析装置6件(16件)、熱分析6件(5件)順です。その他の発表が51 件(昨年38件)と増加し、粒径・粒度分布測定装置によるナノ粒子測定など10件(9件)、粘度・粘弾性測定装置の応用事例が6件(7件)あります。ここでは、ナノ材料一般論として、物性評価だけでなく、材料の微量成分分析も含めた応用事例を紹介しています。

3.4 その他(IT含む)

IT関連を含む「その他」の分野に関する昨年の発表総数は97件であったのに対し、今回は113件となり,昨年より増加するとともに1昨年と同数になりました装置別では分離分析装置が23件(昨年22件:以下括弧内は昨年実績),X線応用分析2件(7件),質量分析装置18件(12件)、光分析装置11件(16件)、前処理関連8件(4件)でした。質量分析装置、前処理関連が増加しているのに対して、X線応用分析、光分析装置の件数が減っています。

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