1.総論

(一社)日本分析機器工業会と(一社)日本科学機器協会との連携で開催するJASISは、今年も9月5日(水)から9月7日(金)の3日間、幕張メッセで開催されます。

「新技術説明会」は、出展企業が、自社の製品及び分析法などの技術動向、実際の分析にあたっての参考情報などを提供する場であり、各分野、各機器の専門家が直接説明を行うこと、各社の情報を効率よく収集できることなどから、毎年多くの方々に参加いただいている企画です。

今年の機種別及び総発表件数について、グラフにまとめましたので、ご参照ください。総テーマ数は、昨年の347件に対して、352件と、5件増加しています。機種別では、「その他」に分類されるものが最も多く112件32%(昨年118件34%:以下括弧内は昨年実績)、次いで「分離分析」64件18%(54件16%)、「光分析」52件15%(35件10%)、「質量分析」45件13%(48件14%)、「X線応用分析」30件9%(28件8%)、「表面分析」22件6%(28件8%)などとなっています。今年は「光分析」の増加が目立っています。

発表の対象となる分野については、昨年、一昨年と同様、「ナノ・材料」の区分が最も多く、全体の39%(昨年39%、以下括弧内は昨年実績)を占めています。次いで「その他」35%(33%)、「バイオ」12%(13%)、「環境」11%(14%)、「IT」3%(1%)となっており、素材の解析に関する分析機器、手法が重視されている傾向が続いています。

分析の対象物質については、「創薬・製薬」(昨年の1位、以下括弧内は昨年順位)、「石油・石油化学・ゴム・プラスチック」(2位)、「食品」(2位)、「電子材料・半導体」(7位)、「紙・パルプ・繊維・インク・染料」(4位)、「セラミックス・誘導体・液晶」(6位)、「ライフサイエンス・医療」(8位)、「その他」(11位)、「環境(大気・水質・土壌)」(5位)、「鉄鋼・非鉄金属」(9位)、「環境(廃棄物)」(11位)の順となっています。上位3物資のテーマ数の暫増に比して、今年は「電子材料・半導体」が大きく増加している点が注目されます。

2.機種別動向

2.1 光分析装置

光分析の発表件数は全52件(昨年35件)で、演題全体の15%でした。装置分類での内訳はラマン13件(同13件)、赤外・近赤外12件(同8)、紫外可視5件(5)、原子吸光7件(1)、ICP関連5件(1)でした。光分析では、顕微イメージング手法としてラマン分光法とFTIR法との対比や、併用に関する演題が目立ちます。異なる分析手法を、分析対象に照らして対比しながら原理を含めて解説するというトレンドは、微量元素分析手法「原子吸光とICP発光」などの分析ノウハウに関する演目にもみられます。異なる分析手法を組み合わせた複合システム化とはまた異なる傾向といえます。従来、光分析の演題は材料分野に偏重する傾向がありましたが、ラマンの応用分野の広がりに見られるように、医薬・原薬、高分子、生体試料や、食品分野に加え、異物分析や凝集状態のモニタリングなど、一層の普及期に入りつつあることを示しています。

2.2 X線応用装置

X線応用装置関連の発表件数は30件(昨年28件)で、微増となりました。今年の発表件数を機種別で見ますと、「蛍光X線分析装置」は12件(15件)、「X線回折装置」は5件(6件)、「その他」は13件(8件)となっています。ここ数年「X線回折装置」が減少傾向にあり今年も1件減、「蛍光X線分析装置」も3件減となっています。「その他」は5件の増加となっており、「蛍光X線分析装置」の減少分を「その他」が補う形となっています。「その他」11件の内訳は、X線CTが昨年同様4件、XPSが1件、EDS/EBSD1件、異物分析2件、複合分析3件です。X線CTは装置分野として定着した感があり、また異物/複合分析では「蛍光X線分析装置」を利用している事から、「蛍光X線分析装置」17件、「X線回折装置」5件、「X線CT装置」4件、「その他」2件と読みかえることもできます。

発表内容を機種別に見ますと、「蛍光X線分析装置」では測定ノウハウや測定例に関する発表が目立ち、現場に即したソリューションの提供という方向付けが読み取れます。同様な傾向は「X線回折装置」でもみられ、高性能化した装置の紹介に関する発表と測定例や測定手法、ノウハウに重きを置いた演題が拮抗しています。「X線CT装置」では、装置性能の紹介と測定例の紹介がそれぞれ2件、「その他」ではEDS/EBSDとXPSの最新状況の紹介となっています。

2.3 質量分析装置

質量分析装置の発表件数は45件となりました。昨年の48件からはやや減少したものの、引き続き新技術説明会全体の中で主要なテーマの一つとなっています。質量分析装置はGC、LC、SFCをはじめとする分離装置や、EI、CI、ICP、DARTなど多彩なイオン化手法と組み合わされ、多様な応用分野に広がりを見せていますが、近年ではシングル四重極、トリプル四重極、二重収束、TOFなど質量分離法も幅広く選択できるようになってきており、新技術や原理を紹介する数多くの講演が予定されています。今年度は食品分野、規制対応、材料/化成品分析、医薬、農薬をはじめとするメジャーな分野でのアプリケーションが多数紹介されます。質量分析装置の特徴のひとつとしてライブラリー検索が多用されますが、不純物、異物、食品、医薬品、E&Lなど分野別ライブラリーを用いたスクリーニング分析への応用など、ユーザーにとっては見逃せないテーマの講演も実施されます。

2.4 表面分析装置

今年は22件(昨年28件)と昨年に比べて6件減少しております。最も多いのがSEM(走査型電子顕微鏡)の発表です。昨年より1件増加して10件となっています。次にSPM(走査プローブ顕微鏡)の発表が多く、昨年同様に4件となっています。その他、EDS (エネルギー分散型X線分析装置)2件、XPS(X線光電子分光装置)1件、TEM(透過型電子顕微鏡)1件などとなっております。

2.5 分離分析装置

分離分析に関する発表件数は64件で、昨年の54件から増加し、単体では最も講演数の多い分野です。その内訳を装置分類で見ると、LC関連が35件と最多ですが、そのうちLCカラム関連の講演が24件あり、カラムに関する新技術が発展していることが見て取れます。AIやクラウドなどの「新技術」の利用や、「検出」に焦点を当てたテーマもあります。
GC関連の講演は16件で、食品分析やRoHS規制など時流を反映した分野のアプリケーションが目を引きます。また、高感度検出、ポストカラム反応、バルブソリューションなど、進歩を感じさせるハードウエア新技術に関するテーマも見られます。イオンクロマト5件、超臨界クロマト/抽出、GPC、アプリケーションフォーカスの講演がそれに続きます。
分離分析に関する講演テーマを分野別で見ると、近年の傾向そのままに「コツ」や「ワザ」、「初心者でも」といった「ノウハウ」に関する発表が14件と高い比率を示しています。年々ハードウエアやシステムが進化する一方で、用途開発やノウハウの獲得にユーザーが大きな関心を持っていることが背景にあるようです。

2.6 前処理装置

前処理装置関連の発表件数は、10件となります。分野としては、環境3件、ナノ材料2件、バイオ2件、その他3件となっています。今年の発表件数を装置別に見ますと、固相抽出装置が5件、マイクロ波を用いた分解抽出装置が3件、高圧溶媒抽出装置が1件、マイクロ波を用いた合成装置が1件となります。生体試料や食品からの固相抽出から分析までの手法(4件)や、酸分解による金属分析までの手法(3件)などのアプリケーションを含めた発表や、装置ハードを中心とした発表(3件)と実際の分析に対応した発表が多くなります。幅広い成分を対象とするため、分析目的に応じた前処理方法や分析手法、さらにそれらの組み合わせなど、多種多様の前処理が発表されます。

2.7 システム関連

システム関連では、今年は9件の発表が予定されています。このうち、データインテグリティーに関する発表が5件と最も多く、データ信頼性に関する発表が多くなっています。また、クロマトデータシステムなどの電子ファイルを管理するシステムや、ラボすべての情報・作業記録をペーパレスで効率的に管理する方法も紹介されます。今後はラボデータの電子化・システム化がより進んで行くことが予想され、動向が注目されます。

2.8 その他の動向(熱分析含む)

その他(熱分析を含む)の発表総数は117件(昨年126件:以下括弧内は昨年実績)と昨年よりわずかに減少となりましたが、全体発表件数の33%を占めています。分野別内訳では、「その他」が47件(39件)、「ナノ・材料」が42件(57件)、「バイオ」は16件(14件)、「環境」は9件(11件)、「IT」は3件(0件)という順になっています。昨年に続き「ナノ・材料」が上位を占めていますが減少しています。また、「環境」、「バイオ」の増減が殆どないのに比べ、「IT」が増加しています。また熱分析は117件中8件で昨年(8件)と同数となっています。 

3.分野別動向

3.1 バイオ関連

バイオ関連の発表件数は41件となります。発表内容は分離分析にかかわる発表が17件、ラマン等の光分析を用いた発表が3件、質量分析や表面分析に関するものがこれに続きます。その他として、サンプルハンドリング、培養、超純水や試薬など、前処理から分析そしてデータマネージメントまで、バイオ関連分析に関する幅広い講演が予定されています。医薬品、酒類、健康/美容、ライフサイエンスなど、アプリケーションにフォーカスした発表も注目されます。

3.2 環境関連

環境と登録された発表は40件(昨年47件、以下の括弧内は昨年実績)であり、昨年より7件の減少(15%減)となっています。内訳は、分離分析:6件、質量分析:6件、原子吸光分析:6件、X線応用分析:3件、ICP:2件、光分析:10件、その他:7件となっています。
分析対象物質に環境物質を含めている発表は、大気・水質・土壌関連で115件(164件)、廃棄物関連で95件(101件)であり、昨年に比べて-30%減および-6%減です。前者は昨年の増加分がキャンセルされて一昨年の件数より微弱となっており、後者は昨年と同程度の件数となっています。環境物質測定への関心度が依然として高い状態にあることがうかがえます。

3.3 ナノ・材料

今年のナノ・材料関係の発表件数は137件(昨年137件)と昨年並みとなり、分野別では最多の件数です。装置別でみると、光分析装置27件(17件)、X線応用分析装置19件(16件)、表面分析装置18件(26件)、質量分析装置17件(12件)の順でした。続いて、分離分析装置11件(6件)、熱分析4件(6件)の順です。その他の発表が39 件(昨年51件)あり、粒径・粒度分布測定装置によるナノ粒子測定など10件(10件)、粘度・粘弾性測定装置の応用事例が8件(6件)あります。ここでは、ナノ材料一般論として、物性評価だけでなく、材料の微量成分分析も含めた応用事例を紹介しています。

3.4 その他(IT含む)

IT関連を含む「その他」の分野に関する昨年の発表総数は113件であったのに対し、今回は134件となり,昨年より増加しています。装置別では分離分析が30件(昨年23件:以下括弧内は昨年実績),X線応用分析8件(2件),質量分析21件(18件)、光分析13件(11件)、前処理関連3件(4件)でした。前処理関連がほぼ同等であるのに対して分離分析、X線応用分析、質量分析、光分析関連の件数が増加しています。

「新技術説明会」は、出展企業が、自社の製品及び分析法などの技術動向、実際の分析にあたっての参考情報などを提供する場であり、各分野、各機器の専門家が直接説明を行うこと、各社の情報を効率よく収集できることなどから、年々多くの方々に参加いただいている企画となっており、2003年~今年の機種別及び総発表件数は、以下のように推移しています。

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